東京地方裁判所 昭和40年(特わ)510号 判決
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〔判決理由〕(罪となるべき事実)
被告人福田義一は昭和三八年六月から昭和四〇年七月まで日本専売公社東京地方局武蔵野出張所長として、被告人柳原秀夫は昭和三九年五月から昭和四〇年一〇月まで同地方局小石川出張所長として被告人平山光三郎は昭和三八年八月から昭和四〇年一〇月まで同地方局板橋出張所長として、被告人栗原俊一郎は昭和三八年八月から四〇年一〇月まで同地方局立川出張所長として、被告人木村信之助は昭和三八年六月から昭和四〇年八月まで同地方局墨田支局長として、それぞれ各出張所又は支局管内のたばこ小売人とその団体であるたばこ商業協同組合に対し指導を行ない、かつたばこ小売人の指定やその取消に関する調査およびたばこ小売人に対する製造たばこの売渡や出張販売の許可などを行なう職務上の地位にあつたものであるが、いずれも、同公社の総務理事小林章(但し、昭和三九年一〇月に同公社を退職)が昭和四〇年七月四日施行の参議院議員通常選挙に全国区から立候補する意思を有することを知り、同人が立候補したうえは同人に当選を得しめる目的をもつて、
第一 被告人福田義一は、
(一) 昭和四〇年二月二日頃、東京都三鷹市下連雀二五六番地東洋信託銀行三鷹支店会議室において開催された武蔵野出張所管内の武蔵野たばこ商業協同組合の理事委員合同会議に出席した際、自己の前記職務上の地位を利用し、右組合役員でありかつ前記選挙の選挙人である大久保賛三等三〇名に対し、「もと専売公社総務理事で、今度の参議院議員選挙に立候補される小林章氏は立派な人物で業界のために働いて貰える人物であるから、組合員などに広く呼びかけて同氏の後援会員を多数募集し同氏を応援して貰いたい。」旨挨拶して、暗に右小林章のための投票並びに投票とりまとめ方を勧誘し
(二) 同年二月一一日頃、同都杉並区荻窪三丁目四七番地杉並たばこ商業協同組合事務所において、開催された武蔵野出張所管内の杉並たばこ商業協同組合の理事、地区委員、婦人部委員の合同会議に出席した際、自己の前記職務上の地位を利用し、同選挙の選挙人である同組合役員榎本恒五郎等約三〇名に対し、小林章について前記(一)の挨拶と同様の趣旨の挨拶をして、暗に同人のための投票および投票とりまとめ方を勧誘し、
第二 被告人柳原秀夫は、昭和四〇年一月一九日頃、東京都中野区橋場町三七番地中野たばこ商業協同組合事務所において、小石川出張所管内の中野たばこ商業協同組合の役員会が開催された際、自己の前記職務上の地位を利用し、同組合の理事長伊藤孝に対し、小林章後援会入会申込書付趣意書(昭和四一年押第三一八号の六と同じもの)約二〇部を渡し、右役員会の際、同組合の役員で右選挙の選挙人である檀原康男等一〇数名に、右申込書用紙を配布しかつ、小林章の後援会員の募集に藉口して暗に小林のための投票および投票とりまとめ方の勧誘をして貰いたい旨を依頼し、
第三 被告人平山光三郎は、
(一) 昭和三九年九月二八日頃、東京都豊島区池袋二丁目一、一〇九番地池袋信用組合会議室において開催された前記板橋出張所と同管内の北豊島たばこ商業協合組合の共催にかかる同組合第一〇方面部会に出席した際、自己の前記職務上の地位を利用し、前記選挙の選挙人である同組合理事市川芳人等約六〇名に対し、「専売公社総務理事の小林章氏が近く公社を退社して参議院議員に立候補するので、宜しくお願いしたい。」旨の挨拶をして、暗に小林章のための投票および投票とりまとめ方を勧誘し、
(二) 昭和三九年一月一六日頃、東京都板橋区板橋本町三二番地料亭「重兵衛」において、自己の前記職務上の地位を利用し、同選挙の選挙人である、前記板橋出張所管内の北豊島たばこ商業協同組合および板橋たばこ商業協同組合の役員である中野音吉外約八名に対し、「今度の参議院議員選挙に小林章氏が立候補する予定です。たばこ商業協同組合連合会の方から、小林章後援会入会申込書が送られているはずですから、一人でも多く入会されるようお願いしたい。」旨の挨拶をして暗に右選挙における小林章のための投票および投票とりまとめ方を勧誘し、かつ右勧誘に対する謝礼の趣旨を含めて一人当り約一、五〇〇余円相当の酒食の饗応接待をし、
第四 被告人栗原俊一郎は、昭和四〇年一月二二日頃、立川市錦町一丁目九〇番地日本専売公社東京地方局立川出張所会議室において、同出張所管内の立川たばこ商業協同組合理事会が開催された際、自己の前記職務上の地位を利用し、同組合理事長旗野留五郎に対し小林章後援会入会申込書付趣意書および同会発起人名簿(昭和四一年押第三一八号の六、七と同じもの)各五〇枚位を渡し、右理事会の際、同組合の役員で右選挙の選挙人である粕谷正夫等約一〇名に右申込書用紙などを配布し、かつ小林章の後援会員の募集に藉口して暗に小林章のための投票および投票とりまとめ方の勧誘をして貰いたい旨を依頼し、
第五 被告人木村信之助は、
(一) 昭和四〇年一月二三日頃、東京都墨田区吾嬬町二丁目三番地料亭「富久井」において行なわれた墨田支局管内の東京東部たばこ商業協同組合の役員新年会に、小林章とともに出席し、その席上、自己の前記職務上の地位を利用し、同選挙の選挙人である同組合の役員中島久良吉等五〇名に対し、小林章の経歴、人物などを紹介し、とくに同人がこれまで専売公社総務理事としてたばこ小売店のため尽力したことおよび今後もたばこ小売店のため尽力してくれる人物であるから、同人を宜しくお願いしたい旨述べて、暗に右選挙における小林章のための投票および投票とりまとめ方を勧誘し、
(二) 同年二月二日頃、同都同区横川町二丁目二番地東京東部たばこ商業協同組合事務所において開催された同組合の理事会に出席した際、自己の前記職務上の地位を利用し、予め同組合の書記長杉本俊雄に依頼して右理事会の出席者で右選挙の選挙人である同組合常務理事中島久良吉等約一六名に小林章の後援会入会申込書付趣意書および同会発起人名簿を配布したうえ、右中島久良吉等に対し、小林章後援会の入会募集に藉口して、暗に小林章のための投票および投票とりまとめ方の勧誘を行ない、
(三) 同年二月一三日頃、東京都葛飾区下小松町八八〇番地江川たばこ商業協同組合事務所において行なわれた同支局管内の同組合の販売対策常任委員会兼理事会に出席した際、自己の前記職務上の地位を利用して予め同組合の書記長小野寺未之進に依頼して右出席の同組合役員で前記選挙の選挙人である神谷銀蔵等約一二名に対し、小林章後援会入会申込書付趣意書および同会発起人名簿を配布したうえ、右神谷銀蔵等に対し、右小林章後援会の入会の募集に藉口して、小林のための投票および投票とりまとめ方を勧誘し、
もつて、いずれも前記公社職員である地位を利用して選挙運動を行なつたものである。
(法令の適用)≪前略≫被告人等の判示各地位利用による選挙運動は、いずれも公職選挙法第一二九条所定の運動期間前に行なわれたものであり、検察官は起訴状において、なお公職選挙法第二三九条第一号、第一二九条の適用をも求めているけれども、公務員等の地位利用による選挙運動は、選挙運動期間中たると事前たるとを問わす禁止されており、その法定刑も一般の事前運動に対する法定刑よりも加重されていることなどに照すと、本件について、一般の事前運動に対する罰条を適用する余地はないと解せられる。(寺尾正二 渡部保夫 長谷川正幸)